2018年6月17日日曜日

全国漢文教育協会大会において報告を行いました

 全国漢文教育協会第34回大会において、本プロジェクトの成果の一部を報告し(「戦前までの日本漢詩についての教養と今日の国語教育:江戸・明治期の漢詩詞華集から考える」報告者:合山林太郎)、貴重なご教示を賜りました。このような機会を与えてくださった中村聡先生、司会の田口暢穂先生、また、温かい励ましのお言葉をいただきました石川忠久先生に心より御礼申し上げます。
 現行の学習指導要領など(高等学校・古典B)が、日本漢文について言及していることは、以前より、本プロジェクトの活動の中で言及いたしておりますが(→関連ページ)、2022年度から施行予定の、次期の高等学校学習指導要領にも、古典の教材として日本漢文を含めるべきことが記載されており(→PDF)、日本漢詩文が教科書で取り上げられることが予測されます。
  • 「言語文化」(必修):内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「B読むこと」の教材は,古典及び近代以降の文章とし,日本漢文,近代以降の文語文や漢詩文などを含めるとともに,我が国の言語文化への理解を深める学習に資するよう,我が国の伝統と文化や古典に関連する近代以降の文章を取り上げること。(略)
  • 「古典探求」:内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「A読むこと」の教材は,古典としての古文及び漢文とし,日本漢文を含めるとともに,論理的に考える力を伸ばすよう,古典における論理的な文章を取り上げること。また,必要に応じて,近代以降の文語文や漢詩文,古典についての評論文などを用いることができること。
今回の報告では、江戸後期から戦前までの日本漢詩についての基礎的教養のあり方について論じつつ、研究者は、専門的知見を踏まえながら、積極的に国語教育の教材選定などに関しても提案してゆく必要があると述べさせていただきました。
 質疑応答においては、報告に対し、①近代文学と関連の深い漢詩ということで考えるならば、今日の国語教科書の定番教材として中島敦『山月記』があるが、その中に登場する李徴の詩についてより多くの分析が必要であること(漢詩単体として取り上げられる漱石や子規の詩などよりも、こちらの方が、教育の現場においては、情報を提供してほしいというニーズが高い、田山泰三先生)、あるいは、②今回の報告において議論された戦前の漢詩の教養・知識は、主として旧制中学以上の学生という限られた人々を対象とするものであり、それを、約98%の進学率がある今日の高等学校における漢文教育に安易に当てはめてはならない(戦前と戦後では、漢文教育をめぐる環境が大きく変わっており、戦前の教育内容をそのまま今日に適用することは技術的に難しいのではないか、伊藤直哉先生)などの重要なご指摘をいただきました。今後、さらに検討を進めてまいります。

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