2018年10月3日水曜日

パネル「漢文化圏におけるデジタル化」終了いたしました

 時間が経過してしまいましたが、国文学研究資料館第4回日本語の歴史的典籍国際研究集会におけるパネル「漢文化圏におけるデジタル化:東アジアの漢文系データベースと人文学研究の最前線」について、その内容を報告させていただきます。→資料 →プログラム







 今回は、日本を含め、東アジア各国における漢文で書かれた様々な資料のデータベースについて、詳細なご報告をいただきました。多くの論点や情報が提示されましたが、主に言及されたのは、以下の4つのデータベース群でした。
  • 日本の宮内庁書陵部図書寮に収蔵された漢籍のデータベース(住吉朋彦先生)
  • 韓国における韓国漢文書籍・資料についての様々なデータベース(沈慶昊先生) 
  • CBETAを中心とする台湾の仏教関係(漢文で記されている)のデータベース(廖肇亨先生)
  • 日本漢文学関係のパッケージ販売型のデータベース(板橋凱希先生)
  議論や情報提供は多岐に及びましたが、以下3点のみ触れさせていただきます。
 まず、今回のパネルでは、漢籍は海を超えて伝えられてゆくもの、という事実をあらためて強く感じました。漢籍の東アジアあるいは世界における流伝などだけではなく、韓国や日本の漢文資料に対しても、多くの地域において注目されていることが指摘されました。こうした幅広い読者や利用者の層を持っている点は、漢文系のデータベースを考える上で重要なポイントであると思われます。
 次に、こうしたデータベースの構築は、様々な方の情熱を得て、成り立つものであるということも強く感じました。文献学者は、資料についてできるだけ詳細かつ正確な情報を伝えようとし、情報技術者はシステムをよりよいものにしようと努力します。ベンダーの方は、データベース構築がビジネスとして成立するよう、前処理の効率性・精度を高め、あるいは、オペレーターの管理・確保につとめておられます。それぞれの仕事への情熱やアプローチについて想像し、理解することが必要だと感じました。
 最後に、東アジアのデータベースの運営形態の多様性についても、興味深く感じました。大学などの学術・研究機関や図書館、民間企業だけではなく、国家レベルで大きく法整備し、古典のデジタル化を推進するケースもあります。仏教関係者が巨大データベース構築などに関わる場合もあります。こうしたデータベースの外側、すなわち運営の問題についても、多国間で知識が共有されるべきだと感じました。
(文責:合山・黄)