2017年3月20日月曜日

Early Modern Japan Networkパネルを終了いたしました。

 約20名の参加者があり、Early Modern Japan Network代表のフィリップ・ブラウン教授により冒頭の挨拶がなされました。その後、パネル・オーガナイザーのマシュー・フレーリ氏より趣旨説明がなされ、続いて3名の報告、ディスカッサントによる問題提起、フロアとの議論が行われました。
 山本嘉孝氏は、祇園南海の「江南歌」を、和歌世界との関連なども視野に入れつつ分析しながら、合山林太郎氏は、近世後期の詩における、中国と日本とで意味が同じではない語(「萩」など)の用例などを取り上げつつ、マシュー・フレーリ氏は、中国風の地名の言い換えに関する、様々な近世文人の見解を取り上げながら、それぞれの観点から、近世日本漢詩におけるグローバルとローカルについて報告を行いました。
 グローバルとローカルという用語は、これまでの近世日本漢詩研究であまり用いられたことのない概念だと思います。報告者の間では、多くの場合、中国や東アジアの古典中国世界に存在するもの、あるいは、そこへの発信をグローバル、日本独自のもの、また、日本における知識の流通をローカルと捉え、議論がなされましたが、雅俗の”俗”をローカルとして捉える視点なども提示されました。また、総じてローカルを志向する近世漢詩の中にあっても、時期や学派により、程度の違いこそあれ、グローバルを意識しているという意見が多く提出されました。
 これに対して、ディスカッサントのリー・シャオロン先生より報告への意見が提示され、漢詩の読解において、日本の文化的コンテキストをはずして見ることの重要性や、漢土にない物の言い換えは中国の古典詩においても見られる現象であること(たとえば、清末の詩において西洋人がどう表現されたか)などについて指摘がなされました。中国古典詩の伝統のなかには、様々な表現のかたちがあり、漢詩について日本ローカルであるということを説得的に述べるためには、広く深い調査が必要である、という点について、大きな示唆をいただきました。
 フロアからは、日本における文字文化や明清詩論の移入との関わりなどの点から、多くの質問がなされ、活発な意見交換が行われました。なお、今回の報告・議論はすべて英語により行われています。

※概要は事務局がまとめたものであり、発言者の意図と齟齬がある可能性があることをお断りいたします。

関連リンク →パネル・プログラム


 



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