http://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/sympo20160729.html
「日本漢文学研究を“つなぐ”―通史的な分析・国際発信・社会連携―」
"Globalizing Japanese Kanshibun Studies:Interdisciplinary Approaches"要旨
日本漢詩文(日本人が作った漢詩や漢文)は、今日、様々な文芸ジャンルの中でも、とくに大きな研究発展の可能性を持つ領域として注目を集めている。しかし、そこには、いくつかの乗りこえられるべき課題もある。そして、それは、以下に述べるように、"つなぐ"ことによって解決すべき問題として理解し得るように思われる。 まず、日本文学領域において、古代・中世・近世・近代など、時代ごとに行われている研究を "つなぐ"必要がある。すなわち、それぞれの時代において異なる問題意識を共有し、作品へのアプローチや学術用語についても、相互参照可能なかたちへ改めてゆくべきであろう。日本漢詩文の全体像に関して生産的な検討を行うためにも、こうした作業は必要不可欠のものと言える。
次に、研究の成果を社会と"つなぐ"ことも、積極的に考えるべきテーマと言える。学習指導要領の改正などにより、現在、日本人が作った漢詩や漢文が、高等学校の国語教科書に収録されるようになってきている。最新の研究の成果を踏まえつつ、どういった作品が教科書に収録されるべきか、あるいは、研究と教育とをどのように連携させるかといったことについて、具体的な議論を行うべきである。
最後に、海外における日本漢文学の研究と、日本における研究とをどのように "つなぐ "かについても考えなければならない。日本漢詩文への関心は、近年、世界の様々な地域で高まっているが、それぞれの文化圏において、異なる視点から分析がなされている。こうした動向と日本国内での研究の蓄積とを接続し、立体的・多面的な認識を形成することが求められている。
このパネルでは、本共同研究においてこれまで行ってきた試みと成果を報告する。また、英語圏及びフランス語圏における日本漢文学研究の現状について紹介する。その上で、時代ごとに細分化した日本漢詩文研究を通史的に記述するために、どのような工夫が必要か、さらに、研究を国際的に発信し、また社会において役立てるために、どのようなモデルを考え得るかについて討論してゆく。
Abstract
Various fields are paying increasing attention to the study of Japanese Kanshibun (Literary Sinitic or Classical Chinese Prose and Poetry written by Japanese). This panel aims to accelerate this trend by focusing on the following three points.
- Japanese Kanshibun studies have recently been flourishing not only in Japan but also in other countries. However, there still exists a wall between the worlds of domestic and foreign researchers. This panel attempts to promote productive information exchange between researchers from different academic backgrounds by introducing the latest trends in Japanese Kanshibun studies in English-speaking and French-speaking nations.
- Most researchers of Japanese Kanshibun specialize in an individual historical period and the approaches to gain an overall picture of Japanese Kanshibun are rarely adopted in the field of Japanese Literature Studies. This panel will therefore also seek a way for researchers to share their views with other researchers specializing in different periods.
- Works of Japanese Kanshibun are recently being gradually adopted into Japanese textbooks for high school students. An effective way to reflect the latest knowledge of this field in education will also be discussed in this panel.